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斜陽
2004年3月14日 update
気品高い女性の生き様に10代の私はひどく感嘆したのを覚えている。
太宰治の書物の中で私が一番好きなのが「斜陽」である。
このところの記録的な大雪で青森の太宰治の生家で、記念館の「斜陽館」の一部が崩れるというニュースがあった。東北地方には仙台にしか行ったことがなく、岩手の宮沢賢治記念館や、斜陽館には是非いつか足を運んでみたいと思っていたものだ。近頃の気候には振り回されてばかりで人間の無力を感じるばかりである。電気をつけない部屋の中に入ってくる斜陽。
建物の間から差す斜陽。
雲の影が通り過ぎる瞬間の斜陽。
世界に跨る斜陽。
私はビルの窓に映る斜陽が好きだ。
東京でビルに飲み込まれていてもビルの窓に映る斜陽に癒しを感じる。
家の近くに川が流れていて、川面にビルの窓が映る。その窓の中に映る光が特に好きだ。美しさにみとれて放心する。部屋を掃除していたら、友人カメラマン平沼久奈嬢より以前頂いた空の写真を見つけ出した。数年前にひどく落ち込んでいるときに久奈嬢が私に送ってくれた空の写真。斜陽ではなく、真っ当な青。
そらのあおが3月の私に重なってきた。