• HANABI

    2005年8月11日 update

    熊本の夏は毎年「江津湖」という湖の畔で夏の花火大会が行われてきた。そんなに大きくはない湖だが、水面に浮かぶ花火の姿は美しくて、まるでふたつの花火を同時にみているかのような感覚にさえなってくる。その姿を人目見ようと熊本中からたくさんの人が集まってくる。10月には日本一を決める花火師たちの競技花火大会が熊本の八代というところで開催されているし、あちらこちらでもっと大きな夏の花火が上がったりしているようだが私にとっての花火大会はやはり江津湖の花火大会なのである。

    20歳くらいの頃、福岡の百道という海岸で毎年行われている花火大会に友人8人くらいで見物に行ったことがある。地下鉄は増便されるほど満員電車。しかも、近くの駅についたら車両に乗っている人全員が降りるんだから驚いてしまった。まるで脱走でもするかのように、皆同じ方向にぞろぞろと何百人が歩いていく。田舎モノの私にとっては不思議な光景だった。始まった花火はそれはそれは粋で、派手で、かわいくて、素晴らしくて江津湖の花火とは大違いだとひどくショックを受けたことを覚えている。花火は近くであの「ドーン」という爆音を心臓に感じながら見るのが一番感動が大きいように思う。立派な花火があると、皆の歓声と拍手が鳴り響く。その感動の空気にまた感動する。あー。花火師になりたかった。

    今年の熊本の花火は江津湖ではなく、熊本城での打ち上げだった。
    我が家は熊本城まで割と近いので、20時を過ぎると雷のような激しい音の連発。うずうずしてくる。みたい。みたい。とうとう、自転車に乗って出かけてしまった。ビルが立ち並ぶ熊本の一番中心部にお城があるので、よく見えるポイントには人だかりができていた。だから結構見えない。お城まで行くには少し準備不足。花火の高頭部が見える橋の上で妥協して見ていた。少ししか見えないけど、私の周りにも人がたくさん集まってきた。2000発だからすぐに終わってしまったけれど、カラフルが熊本の町を飛び散った。

    実家で手持花火を夫とふたりでしたけれど、似たような種類ばかり入っているものを選んでしまったので、あっけなく終わってしまった。花火は一瞬の美しさに賭ける。一秒も捨てないで賭ける。


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