• 鮮やかな赤

    2004年9月1日 update

    多くのミュージシャンのテキストのように、ライブのほとんどに私達は全国を車で移動している。私なんて自分の身長くらいの楽器を運ぶのだから、車に「様」をたくさんつけたいくらいお世話になっている。いろんな危険性も隣り合わせだが、時間はかかったとしても車で移動することの利点はとにかく大きいのである。最近の基本は池田氏かマネージャーが運転しているが、りん氏はもちろん私もハンドルを握る。普段車を運転することがあまりなく、基本的に運転に自信がないので、運転はすっかりまかせっきりで後部座席に座ることが多く、本を読んでいるか、できるだけ睡眠を取る様にしている。自分の体をライブの時間帯に合わせコントロールしていくことを常に心がけているので、本当は毎日決まった時間に寝て、決まった時間に起き声の調子を整えておきたいところだが、遠出の時など夜中早朝に出発することもあるので、車内での睡眠時間はとても大事なものだ。私にとって声に最も良くないことは打ち上げの席の周りのタバコの煙と、大声で話したり「ガハハ」とのどを使って笑うこと、そして睡眠時間を削ることである。だからできるだけ打ち上げに参加したときは端っこに座るようにしているし失礼することもある、ライブの前日は最低でも7時間は寝るようにしている。
    そんな中、車内で流れていく景色にはいつも心を奪われている。何度も通った土地でも助手席に乗っているときと後部座席に乗っているときでは見える景色があきらかに違うので興味深い。見知らぬ土地を走っているとどこに向かっているのか目的さえも遠のいてその土地の色彩や佇まいにだんだん身を投じていく。ここは熊本に似ているなーとか、この道の構図は面白いなーとか、変な歩道橋があるなーとか、この車種の車が多いなーとかいろいろある。9月、秋の足音が聞こえてきて稲穂の一面緑の揺れる隙間に彼岸花の目の覚めるほど鮮やかな赤色が目立っていた。

    岡山から帰宅途中、熊本に着いてあともう少しで皆家までたどり着くという頃、ちょうど朝のラッシュの時間帯ということでやたらと車が混んでいた。私は運転していてふと前にたくさんの警察の方が並んでいるのが見えた。なんだろう?と思っていたら前の車はそのまま進んでいるのに私を警察が手招きで呼んでいる。「え?何?シートベルトはしているし何も違反した覚えはないし何だ????」とすごく不信を抱きながら車を路肩に寄せる。ずらりと並んだ警察の方に混ざって交通安全の襷をかけた女性が数人、「運転お疲れ様です。」コーヒー2本とガム、そして手作りの交通安全のお守りをいただいた。ちょうど秋の交通安全期間ということで、交通安全のキャンペーン中だったのである。ため息も同時にものすごく驚いたが、長距離運転の後だったこともありなんだかとても嬉しかった。
    皆さん、安全運転に心がけましょう。


Archive